2027年度介護報酬改定はまだ決まっていない。現場の私が5つの視点(案)を読む

施設看護

秋になると、介護の仕事をしている人の間で「報酬改定」という言葉を耳にする機会が増えます。

2026年9月30日、厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会で、2027年度(令和9年度)介護報酬改定に向けた「基本的な視点(案)」が示されました。

最初にはっきり書いておきます。これはまだ「案」です。改定率も、特養を含む各サービスの具体的な内容も、今の時点では示されていません。

それでも私は、この段階の「視点」を読んでおく意味があると考えています。何を大切にして改定を考えるのか、その方向がこれからの議論の土台になるからです。

示された5つの視点(案)

報道によると、示された柱は次の5つです。

  • 物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善
  • 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
  • 地域包括ケアシステムの深化
  • 職場環境の改善と生産性の向上を通じたサービスの質の向上及び介護人材の確保
  • 制度の安定性・持続可能性の確保

この視点は当日の分科会で決めるものではありません。委員の意見を踏まえて、最終的な審議報告に盛り込む考えだと説明されたそうです。

読んでいて、私の目が止まったのは「人員配置基準」「タスクシフト/シェア」という言葉でした。タスクシフト/シェアは、業務の一部をほかの職種や人に移したり、分け合ったりする考え方です。

私が慎重でありたいこと

私は、人員配置の柔軟化を「効率」だけで語ることには慎重でありたいと思っています。

分科会では、介護助手の活用について賛成と懸念の両方の意見が出ました。

清掃や洗濯、ベッドメイキングなどの周辺業務を介護助手が担えば、介護福祉士などが専門的なケアに集中でき、利用者と向き合う時間が増える。そうした意見がありました。

一方で、資格を持たない人の活用が低賃金の仕事を広げ、認知症ケアの質の低下につながらないかという懸念も示されています。人員配置基準を幅広く柔軟にしてほしいという意見と、柔軟にする場合も安全性や質への影響を十分に検証すべきだという意見もありました。

私は、どちらの意見にも頷けるところがあります。

周辺の仕事を担ってくれる人がいれば、現場は確実に助かります。介護助手として働く人の存在を軽く見るつもりは、まったくありません。

ただ、気になっていることがあります。そこで生まれた時間が、本当に本人と向き合う時間になるのでしょうか。

「時間が生まれる」の中身を見たい

人員配置は、職員が何人いるかを表す数字です。大切な数字だと思います。足りなければ、安全も、休憩も、丁寧なケアも守りにくくなります。

けれど、その数字からは分からないことがあります。

その時間に誰が何をしているのか。本人に説明する時間は残っているのか。「少し待ってください」と言われた人が、実際にどれくらい待っているのか。

忙しい時間帯に「ちょっと待ってくださいね」と声をかけて、そのまま次の仕事に移ってしまったことは、私にもあります。あとで戻ったときの、その方の表情を今も覚えています。

こうしたことは、記録にはなかなか残りません。

視点(案)には、LIFE(科学的介護情報システム)の活用など、データにもとづく介護を進める方向も含まれています。データを使うことに、私は賛成です。

それでも、数字は大切です。でも、数字だけではその人は見えません。

人員や生産性について議論するなら、声かけへの反応、待つ時間、説明があったかどうか、本人が安心できているかどうか。こうした数字にしにくい部分も、一緒に見ていく必要があると感じます。

現場の苦しさも、軽くはない

とはいえ、柔軟化をすべて否定したいわけではありません。

人手が足りない現場は少なくありません。物価や賃金が上がるなか、処遇改善は働く人にとって切実な問題です。地域によっては、仕組みを変えなければサービスそのものを続けられない場合もあるのかもしれません。

特養にどのような影響があるのかは、まだ分かりません。分からないまま、不安だけを大きくすることもしたくありません。

だからこそ、決まる前のこの時期に、「何のための効率なのか」を問い続けたいと思っています。

決まる前に、私が見ておきたいこと

改定の中身が固まるのは、これからです。

特養で働く看護師として、私は報酬や配置の議論を、本人の時間の話として読みたいと考えています。

効率化で生まれた時間が、本人への説明や、本人の意思を確かめる時間に向けられるのか。それとも、別の業務で埋まっていくのか。そこを見ていきたいのです。

私が慣れたくないのは、「人が足りないから仕方ない」という言葉で、本人への説明や確認を省くことです。

制度がどう変わっても、目の前の人に「どうしたいですか」と聞く時間は手放したくありません。

注意書き

この記事は一般的な情報と筆者の経験をまとめたものです。
個別の対応は状態や背景によって異なるため、主治医や関係する専門職、
所属施設の手順に相談してください。

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