朝、スマートフォンを開くと「米国CPI、予想を上回る」という見出しが目に入りました。
その下には、米国株が大きく下げたというニュース。
SNSには「FANG+、今日はきつい」「S&P500もつられて下げた」という投稿が並んでいます。
歯みがきをしながら画面をスクロールしているうちに、気持ちが少しざわつきました。
毎月の積立は、もう設定してある。今日、自分がすることは何もないはずです。
それでも、「このままでいいのかな」という声が頭のどこかで鳴っていました。
私は、米国CPIを相場を当てるためではなく、自分の持っているものが、なぜその日に値下がりしたのかを理解するために見たいと思います。
知っておくことと、発表のたびに売買を決めることは、別のことだと考えているからです。
米国CPIは、暮らしの値段を表す数字
CPI(消費者物価指数)は、食べ物や家賃、電気代、サービスなど、暮らしに関わる値段が全体としてどれくらい変わったかを表す数字です。
米国では毎月発表され、ニュースでは「前年の同じ月と比べて何%上がったか」がよく取り上げられます。
「予想を上回る」というのは、物価の上がり方が、事前の予想より強かったという意味です。
物価が上がるなら企業の売上も増えて、株価も上がりそうに思えます。
私も最初は、なぜこれで株が下がるのか、よく分かりませんでした。
市場が見ていたのは、その先の金利
物価が予想より強いと、「米国の中央銀行(FRB)は、まだ金利を下げないかもしれない」という見方が広がりやすくなります。
金利を高めにしておくことには、物価の上がりすぎを抑える役割があるからです。
金利が高いと、株は不利になりやすいといわれます。
ひとつは、預金や債券でも利息がつくなら、値動きのある株をあえて持つ理由が少し弱くなること。
もうひとつは、将来の利益を今の価値に直したとき、小さく見積もられやすくなることです。
たとえば仮に、10年後の100円を今の価値に直すと、金利が年2%ならおよそ82円、年4%ならおよそ68円になります。
同じ100円でも、金利の前提が変わるだけで、これだけ違います。
成長企業の株価には、「これから大きくなりそう」という期待が多く含まれています。
まだ実っていない果物の分まで、先に値段がついているような状態です。
期待の割合が大きい会社ほど、金利が上がったときに割り引かれやすくなります。
S&P500とFANG+は、お弁当の詰め方が違う
どちらも、たくさんの会社の株をまとめて、その値動きを一つの数字で表した「株価指数」です。
S&P500は、米国の大きな会社およそ500社をまとめた指数です。
IT企業のほか、銀行、薬、食品、エネルギーなど、いろいろな業種が入っています。
お弁当でいえば、幕の内弁当でしょうか。
ただし、500社が同じ割合で入っているわけではありません。
会社の規模(時価総額)が大きいほど、たくさん入る「時価総額加重」という決め方です。
大きなおかずほど、お弁当箱の広い場所をとるイメージです。
そのため、S&P500も規模の大きいIT企業の値動きに引っぱられやすい面があります。
FANG+は、テック関連の成長企業10社に絞った指数です。
こちらは「均等加重」で、会社の大きさに関係なく、10社をそれぞれ10%ずつ入れます。
どのおかずも同じ大きさに切りそろえて、10のマスに並べる詰め方です。
株価が動くと割合はずれていくので、3か月に一度、10%ずつにそろえ直します。
ここで勘違いしやすい点があります。
おかずの大きさをそろえても、中身が揚げ物ばかりなら、お弁当全体の偏りは変わりません。
私は、FANG+を「中ではそろえていても、全体としては集中した指数」と理解しています。

CPIから株価までの道すじ
ここまでをつなぐと、こうなります。
物価が予想より強い。
金利が下がりにくいと考えられる。
将来への期待が大きい会社ほど、割り引かれやすくなる。
成長企業だけで構成されたFANG+は、値下がりが大きくなりやすい。
S&P500は、ほかの業種もまじっているぶん、値動きが少し穏やかになることがある。
ただ、これは「そうなりやすい」という道すじにすぎません。
CPIが予想を上回っても、株が上がる日はあります。
市場が物価の強さをあらかじめ予想して、すでに株価に反映していたり、企業の決算など別のニュースが重なったりすることもあるからです。
FRBも、CPIだけを見て金利を決めているわけではありません。
だから私は、「CPIが上がったら、FANG+は下がる」と公式のように覚えるつもりはありません。
私は、発表の日に売買を決めない
あの朝のざわつきは、今思えば、自分が持っているものの中身をよく知らなかったことから来ていたのかもしれません。
自分が選んだ指数は、どんな会社で、どんな詰め方でできているのか。
どんなニュースに、どのくらい値動きが大きくなりやすいのか。
その値下がりを、自分は落ち着いて見ていられるのか。
私が確かめたいのは、そういう手前のことです。
投資には元本割れの可能性があります。
集中した指数を選ぶなら、なおさら、大きな値下がりも含めて引き受けられる比率かどうかを考えておきたいと思います。
私は、経済指標のたびに気持ちを振り回され、積立の手を止めたり、急に増やしたりする投資には慣れたくありません。
CPIは売買の合図ではなく、自分の投資の中身を確かめ直すきっかけ。
そう受け止めて、生活を崩さない範囲で、淡々と続けていきたいと思います。

注意書き
投資の判断は、ご自身の資産状況、収入、生活費、将来の支出、値動きへの耐性などに合わせて行ってください。投資には元本割れの可能性があります。本記事は、特定の投資行動、金融商品、指数、銘柄の購入や売却を勧めるものではありません。制度や指数のルールについては、最新の公式情報を確認してください。


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