気付けば一日が終わっていく
特養で働きながら、3人の子どもを育てています。
朝は洗濯物と天気予報を見比べて、仕事に出て、帰ってきたら夕食を作って、宿題を見て、気付けば一日が終わっている。そんな日々の中で、ふと「教育費、このままで大丈夫なんだろうか」と考える瞬間があります。
投資は長期・積立・分散を基本にしながら続けていますが、子どもの教育費は「いつ、いくら必要か」がある程度決まっている分、また違う種類の心配事です。特に最近よく耳にする「大学無償化」という言葉は、気になってはいたものの、正直なところ、私は内容をきちんと理解していませんでした。
制度が変わるたびに調べ直している
「大学無償化」と一口に言われますが、調べていくと、支援には大きく2つの仕組みがあることが分かりました。1つは「授業料等減免」、もう1つは「給付型奨学金」です。
多子世帯(扶養する子どもが3人以上の世帯)に該当すれば、この2つを所得制限なしで受けられます。所得の高い家庭でも対象になる、というのが、この制度の大きな特徴です。
私自身、制度が新しくなるたびに情報を調べ直しています。今回はいったん、自分なりに数字を整理してみました。
多子世帯の場合、いくら支援されるのか
まず、授業料等減免の上限額は、学校の種類や国公立・私立で異なります。
| 学校種別 | 入学金(上限) | 授業料(年額上限) | 4年間の授業料合計 |
|---|---|---|---|
| 国公立大学 | 28万円 | 54万円 | 216万円 |
| 私立大学 | 26万円 | 70万円 | 280万円 |
| 国公立短期大学 | 17万円 | 39万円 | 78万円(2年制) |
| 私立短期大学 | 25万円 | 62万円 | 124万円(2年制) |
| 私立専門学校 | 16万円 | 59万円 | 236万円(4年制の場合) |
これに入学金を加えると、大学4年間でかかる授業料等減免の総額は、国公立で最大244万円ほど、私立で最大306万円ほどになります。
実際の学費の一部にすぎませんが、この規模の減免を所得制限なく受けられるというのは、家計への影響がかなり大きいと感じました。
もう1つの給付型奨学金は、毎月決まった額が支給される仕組みです。多子世帯の場合、家計の状況によって支給額の区分が変わりますが、自宅から通学する場合と、実家を離れて自宅外から通学する場合とで、金額に差があります。自宅通学であれば月額数千円から3万円台、自宅外通学であれば月額数万円台になる区分があり、こちらは家計の所得によって満額か一部支給かが分かれます。
比較して分かったこと
こうして数字を並べてみると、進学先の選択(国公立か私立か、自宅通学か自宅外通学か)によって、支援を受けられる総額にも、家計から実際に出す金額にも、かなりの差が出ることが分かります。
自宅通学で国公立大学に進学する場合と、自宅外通学で私立大学に進学する場合とでは、4年間でかかる費用の総額そのものが大きく変わります。無償化制度があるからといって、どの選択でも同じように安心できるわけではないというのが、数字を見て感じた実感です。
だからこそ、進学先や通学形態によって、どの程度の自己負担が残るのかを、早めにおおまかに把握しておくことには意味があると思っています。
「両方を最大限に」は、実は両立しないことがある
私は最初、「多子世帯なら、授業料等減免も給付型奨学金も、両方まとめて最大限に受けられるはずだ」と思っていました。
しかし調べていくと、そう単純ではないことが分かりました。給付型奨学金の支給額は、「支給額算定基準額」という指標によって、いくつかの区分に段階的に分かれています。
これは何かというと、 「世帯の住民税の情報から計算される、家計の目安になる数字」です。 年収そのものではありません。順番に説明すると、こうなります。 まず、年収から仕事にかかる必要経費のようなもの(給与所得控除)を引いて、 「所得」という金額を出します。 そこからさらに、家族の人数や状況に応じた控除 (扶養控除、社会保険料控除、基礎控除など)を引いたものが、 住民税決定通知書に載っている「課税標準額」です。 つまり課税標準額は、 「年収から、家族構成や保険料などを考慮した後に残る、 実質的な負担力を表す金額」だと考えると分かりやすいです。 同じ年収でも、扶養する家族が多い、 社会保険料の負担が大きいといった家庭ほど、 この課税標準額は低くなります。 支給額算定基準額は、この課税標準額に6%を掛けて、 そこからさらに一定の調整額を差し引いたものです。 計算式そのものを覚える必要はありません。 大事なのは、 「年収が同じでも、家族構成や控除の状況によって、 この基準額は上下する」 「基準額が低いほど、給付型奨学金は手厚くなる」 という2点です。 正確な基準額は、住民税の課税証明書に載っている数字を使って JASSOの判定ツールで計算できるので、 自分で式を解くよりも、証明書とツールを使うのが確実だと思います。
この基準額をもとにした区分は、次のようになっています。
| 支給額算定基準額 | 区分 | 給付型奨学金(多子世帯の場合) | 授業料等減免 |
|---|---|---|---|
| 100円未満(住民税非課税世帯) | 第Ⅰ区分 | 満額(10割) | 上限額まであり |
| 100円以上〜25,600円未満 | 第Ⅱ区分 | 3分の2 | 上限額まであり |
| 25,600円以上〜51,300円未満 | 第Ⅲ区分 | 3分の1 | 上限額まであり |
| 51,300円以上〜154,500円未満 | 第Ⅳ区分 | 4分の1(多子世帯に属していれば支給あり) | 上限額まであり |
| 154,500円以上 | 多子世帯区分 | 0円(支給なし) | 上限額まであり(所得制限なし) |
この表を見て、私は少し混同していたことに気づきました。「第Ⅳ区分」と「多子世帯区分」はなんとなく似ているのですが、まったく別のものです。多子世帯に属していれば、基準額が154,500円未満のうちは、第Ⅰ〜Ⅳ区分のいずれかに応じて給付型奨学金が段階的に(満額から4分の1まで)支給されます。基準額が154,500円以上になった時点で、初めて給付型奨学金が0円になる「多子世帯区分」に入る、という順序のようです。
一方、授業料等減免のほうは、多子世帯であれば所得にかかわらず上限額まで受けられる仕組みです。基準額がどれだけ高くても、この部分は変わりません。
つまり、「授業料等減免は満額、給付型奨学金もできるだけ多く」という組み合わせを実現できるのは、支給額算定基準額が低い(おおよそ住民税非課税に近い)世帯に限られるということです。多子世帯という条件を満たしていても、給付型奨学金のほうは所得次第で0円になることもある、という点は、制度の名前からは想像しづらいところだと感じました。
また、所得の区分を満たしていても、本人と生計維持者の資産額の合計が5,000万円以上になると、支援そのものが受けられなくなる資産基準も別にあります(多子世帯で授業料等減免のみを利用する場合は3億円未満が基準とされています)。所得の基準額だけでなく、この資産基準もあわせて確認しておく必要があると感じました。
うちの場合、実際の基準額がどのあたりに入るのか、住民税の課税証明書を見ながら、JASSOが公開している判定ツールなどを使って確認してみようと思っています。「多子世帯だから両方たくさんもらえる」と思い込んでいると、実際の見込み額とズレてしまうかもしれません。だからこそ、「多子世帯であること」と「給付型奨学金がどの区分になるか」は、別々に確認する必要があると感じました。
「3人以上」という言葉の、少し複雑なところ
もう一つ、調べていて立ち止まったことがあります。
この制度の「3人以上」という条件は、子どもが生涯で3人いるかどうかではなく、その時点で同時に扶養している子どもの人数で判定されるということです。一番上の子が大学を卒業して就職し、扶養から外れると、その時点で扶養している子どもは2人になります。下の子が大学に進学するタイミングで、扶養する子どもが2人になっていれば、この制度の対象外になってしまう可能性があります。
わが家には子どもが3人いて、年齢はおおむね3歳ずつ離れています。
この間隔は、日々の暮らしでは慌ただしさもありますが、教育費を考える場面では、少し複雑な意味を持つと感じています。
たとえば、上の子が大学を卒業して就職し、親の扶養から外れる頃には、下の子はまだ進学前、あるいは在学中かもしれません。その時点で扶養している子どもが2人になれば、下の子が大学等に進学する時に、多子世帯としての授業料等減免の対象から外れる可能性があります。
「子どもが3人いるのだから、3人とも同じように支援を受けられる」と考えてしまいそうですが、制度上はそう単純ではないようです。もちろん、進学時期や卒業後の進路、扶養の状況によって結果は変わります。
ただ、子どもの年齢差がある家庭では、進学が重なる時期と重ならない時期で、利用できる制度や家計の負担感が変わるかもしれません。だから私は、「今、制度の対象になるか」だけでなく、数年後に誰が進学し、誰が扶養に入っている見込みなのかを、大まかにでも並べて考えるようにしています。
完璧な予測はできません。子ども自身が選ぶ進路も変わるでしょうし、制度も今後見直されるかもしれません。それでも、年齢差と進学時期を意識しておくことで、制度を当てにしすぎず、必要になりそうな教育費を少しずつ準備する理由にはなると感じています。
学業要件(出席率や修得単位数、成績など)を満たさない場合には、警告や支援の打ち切りになることもあるとされています。制度を使えることが分かった後も、在学中は要件を満たし続ける必要があるという点も、あわせて知っておく必要があると思いました。
積み立てながら選択肢を残す
制度を調べれば調べるほど、「使えるかどうかは、その時になってみないと分からない部分がある」と感じます。だから私は、制度に頼りきることも、制度を無視することもせず、その中間を選んでいます。
投資は長期・積立・分散・低コストを基本に、無理のない範囲で続ける。子どもが成人した時に、まとまった資金を渡せる準備もしておく。そのうえで、制度が使えるならありがたく使う、というくらいの距離感です。
制度の有無に一喜一憂するより、「制度があってもなくても、大きく崩れない家計」を目指すほうが、私には合っている気がしています。
特養で働くなかで感じる備えの意味
特養での仕事を通じて、人生の終わりに近い時期の「備え」について考える機会が多くあります。本人の希望や状態、家族の思いを、その都度確認しながら関わっていく中で、「先のことは分からないからこそ、今できる範囲で備えておく」という姿勢の大切さを、何度も感じてきました。
教育費についても、似たような感覚があります。将来を完全に見通すことはできませんが、今分かっている制度や条件を整理し、いくつかの選択肢を残しておくことは、いざという時の安心につながると私は思っています。
答えを急がずに記録していく
大学無償化という言葉は、聞くと安心するようで、実際に数字を並べてみると、家庭ごとに事情が違うことが見えてきます。
授業料等減免と給付型奨学金、この2つは名前も仕組みも似ているようで、条件も上限も別々に決まっています。両方をきちんと使いたいと思うなら、まず自分の家庭がどの区分に入るのかを、思い込みではなく、実際の数字で確認することが必要だと感じました。
うちの場合はどうなるのか、正直まだ確定的なことは言えません。子どもたちの進路も、これから変わっていくでしょう。だから今は、答えを急いで出そうとせず、分かったことを一つずつ記録しておくことにしています。
同じように「大学無償化、うちは対象になるんだろうか」「給付型奨学金もできるだけ多く受けたい」と考えている方にとって、この記事の数字や視点が、考えるきっかけの一つになれば嬉しいです。


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