デイサービスの倒産増加を、現場の努力不足で片づけない

施設看護

高齢者が多いのに、なぜ経営が苦しくなるのか

介護を必要とする人がいる。それなのに、介護サービスを提供する事業者が経営を続けられなくなる。

デイサービスの倒産増加というニュースには、そんなかみ合わなさを感じます。

特別養護老人ホームで働く看護師として、私は、介護の経営を現場とは別の話として切り離したくありません。ケアを続けるには、人も設備も、お金も必要だからです。

ただ、経営が苦しい理由を「選ばれる努力が足りなかった」「職員がもっと工夫すればよかった」と片づけることには違和感があります。

私が言いたいのは、ケアの継続を、現場の頑張りだけに預けないことです。

本人の暮らしを支えるには、働く人が無理を重ねなくても続けられる仕組みが必要だと考えています。

「47件」が表していること、表していないこと

東京商工リサーチによると、2026年1〜9月の「通所・短期入所介護事業」の倒産は47件でした。前年同期の35件から34.2%増え、2025年の年間45件を、9月までに上回っています。調査開始以降、1〜9月としては最多です。

ここで、数字の範囲は丁寧に確かめたいところです。

これは負債1,000万円以上の倒産を数えたもので、デイサービスだけの件数ではありません。短期入所介護も含む業種分類であり、自主的な休業や廃業、閉鎖した事業所のすべてを表す数字でもありません。

また、倒産件数が増えたことと、すべてのデイサービスの経営が同じように悪化していることは別です。この件数だけでは、地域ごとの状況や個々の事業者の収支までは分かりません。

それでも、前年の年間件数を9か月で上回ったことは、提供体制を考えるうえで見過ごせない変化だと私は受け止めています。

「過去最多」という言葉だけを強めるのではなく、何を数えた数字なのか。その確認も、現場を正しく見るための一歩ではないでしょうか。

売上、人材、物価の問題が重なっている

47件のうち、主な倒産原因として「売上不振」が挙げられたのは37件、78.7%でした。東京商工リサーチは、サービスの多様化に伴う競争の激化に、物価高や人手不足が重なっていると分析しています。

介護を必要とする人が多くても、その需要が各事業所の利用に均等につながるわけではないのでしょう。地域でどのようなサービスが求められているか、本人が何を望むかによっても、選ばれ方は異なるはずです。

一方で、利用者に選ばれるための工夫を求めるだけでは、費用の問題は解決しません。

東京商工リサーチの1〜5月の調査では、食費、燃料費、水道光熱費などの上昇や、他産業との人材獲得競争が経営を圧迫する背景として挙げられています。加算への対応に苦慮する事業者もあるとされています。加算とは、一定の要件を満たした場合に、基本の介護報酬に上乗せされる報酬です。tsr-net.co

さらに、1〜9月の倒産では、主因とは別に集計された「人手不足」関連が11件ありました。その内訳は、人件費高騰7件、後継者難2件、求人難と従業員退職が各1件です。「売上不振」と「人手不足」は、別々の事業者に起きた問題として単純に足せるものではありません。

職員の賃金を上げることは、働き続けられる環境を考えるうえで必要な視点です。しかし、その費用を支えられなければ、事業の継続も難しくなります。

私は、賃上げを経営の敵のように扱いたくありません。働く人の生活と、利用する人のケアを、対立させずに支える必要があると感じます。

介護費用が増えても、各事業所の余裕とは限らない

厚生労働省の2025年度「介護給付費等実態統計」では、介護サービスと介護予防サービスを合わせた費用額は12兆2,208億円で、前年度から2.4%増加しました。介護保険給付と利用者負担を含む、全国の費用額です。

これは、デイサービスだけの売上でも、事業者の利益でもありません。

全国の介護費用が増えたからといって、個々の事業所に同じ割合で収入が増え、手元に利益が残るとは言えないでしょう。

経営の状態を考えるなら、利用者数だけでなく、実際の利用状況、収入と支出の変化、人件費や送迎などの負担を併せて見る必要があると私は考えます。今回は、個別の事業所の記録や数値を示しているわけではありません。

そして、経営の数字を読むときにも、その奥にいる人を見失いたくありません。

利用が少ないという結果だけでは、本人がなぜ通わないのかは分かりません。体調、通いやすさ、サービスとの相性、本人の希望など、確かめたい背景があります。

特色を打ち出すこと自体を否定するつもりはありません。ただ、「選ばれるサービス」を目指すとき、本人に必要な支援より、分かりやすい成果や見栄えが優先されていないか。私は、そこにも目を向けたいと思います。

経営を守ることと、本人の声を守ること

経営が苦しければ、サービスの見直しや費用の調整を検討せざるを得ない場面もあるでしょう。すべてを今までどおりに続けることが、いつも可能とは限りません。

だからこそ、変更が本人の暮らしに何をもたらすのかを、置き去りにしたくありません。

デイサービスの利用には、本人にとっての意味があります。どの支援が必要で、何が楽しみで、何に負担を感じるのか。それは、利用回数や収入の数字だけでは読み取れない部分です。

安全や職員体制によって、希望をそのまま叶えられないこともあります。それでも、変更の理由を説明し、本人の受け止め方を確かめることまで、最初から省いてよいとは思いません。

今回の倒産増加を、「高齢者が減ったから」「介護報酬の問題だけ」と一つの理由にまとめるのは難しいように感じます。調査が示しているのは、競争、人材難、物価高などが重なる厳しさです。

私は、忙しさや経営の苦しさを理由に、本人の声が小さくなることには慣れたくありません。

ケアを続けるための経営と、そのケアを受ける人の暮らし。どちらか一方だけを守ればよいのではない。その両方を支えられるあり方を、現場の努力だけに任せず考える必要があると思います。

注意書き

この記事は一般的な情報と筆者の経験をまとめたものです。
個別の対応は状態や背景によって異なるため、主治医や関係する専門職、
所属施設の手順に相談してください。

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