秋の予防接種シーズン。施設で大切にしたい本人の意思と家族への説明

施設看護

秋になると、施設では予防接種の準備が始まります。

対象の方の確認、家族への案内、同意書の準備、日程の調整。毎年のことなので、流れはある程度決まっています。

ただ、流れが決まっているほど、私は一つのことが気になります。本人の意思は、どこで確かめられているのだろう、ということです。

今年の秋に示されていること

厚生労働省によると、新型コロナワクチンの定期接種は2026年10月から始まり、費用は原則有料です。対象は65歳以上の方と、60〜64歳で一定の基礎疾患がある方とされています。

9月1日には、日本感染症学会など3学会が、高齢者への新型コロナワクチン定期接種を強く推奨する見解を出しました。

9月18日には、日本感染症学会が、インフルエンザワクチンについての提言を出しています。接種を推奨する対象として、高齢者、施設の入所者、介護者、医療従事者などが挙げられています。

施設で暮らす方は、集団の中で生活しています。感染が広がったときの影響を考えると、こうした推奨は重く受け止めたいと思います。

私が言いたいこと

それでも、私が言いたいのは、接種を「決まった手続き」にしないことです。

打つか、打たないか。そこに一律の正解はありません。持病、体調、これまでの接種での反応、主治医の判断、そして本人の考えによって変わるものだからです。

推奨が強いことと、本人に聞かなくてよいことは、別の話だと私は思います。

同意書に家族の署名がそろえば、手続きとしては進められるかもしれません。けれど、その前に本人に話をしたかどうか。私は、そこを省きたくありません。

意思を確かめるのが難しいとき

認知症などで、説明をそのまま理解したり、言葉で答えたりするのが難しい方もいます。

そういうときに、「本人には分からないから」と最初から家族だけで決めてしまうことには、私は違和感があります。

たとえば、こんな関わり方ならできるかもしれません。

  • 短い言葉で、一つずつ伝える
  • 体調のよい時間帯に話す
  • 「腕に注射をします」と、することを具体的に伝える
  • 以前の注射のとき、どんな様子だったかを振り返る
  • 元気だったころの考え方や、大切にしていたことを家族に聞く

ここで聞いた言葉や表情が、そのまま判断になるとは限りません。それでも、本人がどう受け止めているかを知る手がかりにはなります。

本人の声は、同意書の外側に置いてはいけないと思います。

家族への説明で大切にしたいこと

家族は、迷いながら判断していることが多いように感じます。

「打たないで何かあったら」と心配する方もいれば、「体に負担をかけたくない」と考える方もいます。どちらの気持ちも、本人を思ってのことでしょう。

だから私は、案内の紙を渡して終わりにするのではなく、次のようなことを伝えられたらと考えています。

  • 一般的に期待される効果と、起こりうる副反応
  • 本人の今の体調や、以前の接種での様子
  • 本人が話していたことや、表情から受け取ったこと
  • 迷ったときは主治医に相談できること

接種しないという選択も、十分に考えたうえでのものなら、尊重されるべきだと私は思います。

接種のあとに見ていたいこと

接種のあとは、体温、接種した部分の腫れや痛み、食事や水分の量、眠り方などを観察します。

体温は、体の反応を知る大切な手がかりです。ただ、その数字だけでは分からないこともあります。

だるそうにしていないか。いつもより口数が少なくないか。腕を動かしにくそうにしていないか。「どこか痛いところはありますか」と聞いたときの返事はどうか。

数字と、いつもの様子との違い。その両方を見て、気になることがあれば看護師や医師に相談する。それが、接種を受けた本人への責任だと考えています。

毎年のことだからこそ

予防接種は、毎年の業務の一つです。慣れていくのは自然なことかもしれません。

それでも私は、慣れることで本人への説明を省くことには、慣れたくありません。

打つか打たないかを、本人のいないところで決めてしまわないこと。推奨を伝えながらも、本人と家族が迷う時間を急がせないこと。今年の秋も、そこを守りたいと思います。

注意書き

この記事は一般的な情報と筆者の経験をまとめたものです。
個別の対応は状態や背景によって異なるため、主治医や関係する専門職、
所属施設の手順に相談してください。

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