「何か月分あれば安心」は本当か
食品や光熱費の値上げが続くと、毎月の生活費は少しずつ変わっていきます。
生活費が変われば、手元に置いておきたい現金も変わるはずです。それなのに、生活防衛資金の話になると、「生活費の何か月分」という一つの数字だけが先に語られることがあります。
生活防衛資金とは、病気やけが、収入の減少、家電の故障などの急な出費に備えて、すぐに使える形で持っておく現金のことです。
私は、この金額を「何か月分」という数字だけで決めたくありません。
目安があること自体は役に立ちます。ただ、その数字を全員に共通する正解のように扱うと、自分の家計にとって本当に必要な備えが見えにくくなるように感じます。
私が言いたいのは、「何か月分あるか」より先に、「何に備えたいのか」を考えることです。
必要な金額は家計ごとに違う
生活防衛資金の必要額は、いくつもの条件で変わります。
- 収入の安定性:収入が毎月ほぼ一定か、変動しやすいか
- 住居費:家賃や住宅ローンなど、減らしにくい支出がどのくらいあるか
- 保険:病気やけがの際に、どの程度まで保障でカバーされるか
- 働き方:休んだときに収入がどうなるか、収入源が一つか複数か
- 近いうちに使う予定のお金:教育費、車の買い替え、住まいの修繕など
- 値動きへの耐性:資産が下がったときに、落ち着いて生活を続けられるか
同じ生活費でも、収入が安定している人と、収入が月によって大きく変わる人では、備えておきたい金額が違って当然でしょう。
だからこそ、他の人の金額をそのまま当てはめるより、自分の家計の条件を一つずつ確認したいと思います。
教育費は、防衛資金とは分けておきたい
私が特に意識したいのは、近いうちに使うことが分かっているお金です。
たとえば教育費。進学の時期が近づくと、入学金や授業料、教材費、場合によっては住まいの費用など、まとまった支出が見えてきます。
ここで気をつけたいのは、教育費を生活防衛資金の中に含めてしまうことです。
生活防衛資金は「何が起きるか分からないとき」のためのお金です。一方、教育費は「いつ頃、どのくらい使うか」がある程度見えているお金です。
性質の違うお金を一つの口座にまとめると、教育費を払ったあとに、急な出費への備えが思ったより薄くなっていることがあります。
私は、近く使う予定のお金まで値動きのある資産に置くことには慎重でありたいと考えています。
投資には元本割れの可能性があります。使いたい時期に値下がりしていれば、売るか、待つかで迷うことになるでしょう。数年以内に使うお金は、増やすことより、必要なときに確実に使えることを優先したいところです。
教育費に関わる支援制度や奨学金は、対象者や条件が見直されることがあります。制度の詳細は最新の公的情報を確認してください。
仮の数字で考えてみる
ここからは、すべて仮定の数字です。実際の家計や、私自身の金額ではありません。
仮に、毎月の生活費が20万円の家計があるとします。生活費の6か月分を備えると考えれば、120万円です。
ところが、値上げで生活費が月1万円増えて21万円になると、同じ6か月分は126万円になります。数字の目安を守っているつもりでも、生活費が変われば、必要な金額も動いていきます。
さらに、数年以内に教育費として仮に100万円を使う予定があるとします。
このとき、手元の現金が仮に180万円あったとしても、「生活費の8か月分以上あるから十分」とは言い切れません。教育費の100万円を分けて考えると、急な出費に備えられるのは残りの80万円、つまり生活費の4か月分弱になるからです。
この計算で伝えたいのは、何か月分が正解かではありません。
同じ現金でも、何に使う予定のお金なのかを分けると、備えの厚さの見え方が変わるということです。
現金を持つことは非効率なのか
「現金を多く持つのは非効率だ」という考え方もあります。
たしかに、物価が上がる局面では、現金の価値は少しずつ目減りしていく可能性があります。長期的に資産を増やすことを考えれば、投資に回したほうがよいと感じる人もいるでしょう。
私も、資産形成の土台として、広く分散された低コストのインデックス投資を重視しています。
それでも、私は現金を持つことを遠回りだとは思いません。
急な出費のたびに投資を売らなければならない家計では、相場が下がっているときにも売る判断を迫られるかもしれません。現金の備えがあることで、投資を長く続けやすくなる面もあると考えています。
一方で、必要以上に現金を抱え込み、将来への備えを何もしないことにも、私は納得できない部分があります。大切なのは、現金と投資のどちらが正しいかを決めることではなく、それぞれに役割を持たせることではないでしょうか。
備えは、暮らしに合わせて動かしていい
生活防衛資金は、一度決めたら終わりではないと思います。
生活費が上がったとき、働き方が変わったとき、大きな支出が近づいたとき。そのたびに、「今の自分は何に備えたいのか」を確認し直す。私は、そのほうが目安の数字を守ることより大切だと感じています。
私が守りたいのは、何かが起きたときに慌てて生活を崩さずに済む余裕です。
他の人の「何か月分」に自分を合わせることには、慣れたくありません。
注意書き
投資判断は、ご自身の資産状況、収入、生活費、将来の支出、リスク許容度などに応じて行ってください。投資には元本割れの可能性があります。本文は、特定の投資行動や金融商品・銘柄の購入、売却を勧めるものではありません。


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