介護の現場で、気になったことを言葉にしにくいとき

施設看護

介護の現場で働いていると、「少し気になる」と思いながら、すぐには言葉にできないことがあります。

見えていることがまだ一部分かもしれない。相手には別の考えがあるかもしれない。忙しいところに声をかけて、仕事を増やしてしまわないだろうか。そんな思いが重なると、気になったことを胸の中にしまいたくなります。

特養で看護師として働く私も、現場での伝え方について考えることがあります。今回は、誰かに何かをお願いする方法よりも、その前にある「気になったことを言葉にする難しさ」について書きたいと思います。

言いにくさは、気持ちだけの問題ではない

何かを言い出せないとき、「自分に勇気がないからだ」と考えてしまうことがあります。

でも、言いにくさには、その場の状況も関わっていると思います。互いに仕事を抱えているときは、短い一言さえ相手の手を止めます。以前に話がうまく伝わらなかったと感じていれば、次の言葉を選ぶことにも慎重になります。

立場や役割の違いもあります。看護職から見えていることと、日々の暮らしを支える介護職から見えていることは、同じとは限りません。自分の見方を伝えるつもりでも、相手には「今のやり方がよくない」と聞こえてしまうかもしれません。

だから私は、言えなかった人を責めるだけでは、この難しさは解けないと思っています。誰もが話しやすいわけではない現場で、どうすれば小さな気づきを出せるのか。そこまで考えたいです。

「気になる」と「決めつける」の間

気になったことがあっても、すぐに理由までわかるわけではありません。

本人の様子がいつもと違って見えたとしても、自分が見ていない時間に何があったかはわかりません。ほかの職員がすでに確認していることもあれば、私が普段の様子を十分に知らないこともあります。

そんなとき、「これはおかしい」と結論から伝えるより、「私にはこう見えたけれど、どうでしょう」と確かめるほうが、話し合いを始めやすいと思います。

これは、気になったことを小さく扱うためではありません。見たことと、自分がそこから考えたことを分けるためです。相手の説明を聞いて考えが変わることもあるでしょうし、話して初めて、確認が必要な点がはっきりすることもあると思います。

ただし、本人の状態や安全について速やかな対応が必要と考えられるときは、言葉を選ぶあまり伝えるのが遅れてはいけません。所属施設の手順に沿って、必要な人にすぐ相談・共有することが大切です。

忙しさの中で、考えることを止めない

介護の現場には、待ってくれない仕事があります。一つの対応が終わる前に、次の仕事が始まることもあります。

そんな日には、「今はそれどころではない」と感じるかもしれません。その気持ちも、私にはわかるように思います。目の前の仕事を進めなければ、暮らしを支えられないからです。

一方で、忙しいからこそ、気になったことが埋もれてしまう怖さもあります。今すぐ長い話し合いができなくても、誰に伝えるか、いつ改めて確認するかを考えることはできます。

「あとで話そう」と思ったことを、あとで本当に話せるかどうかは、個人の記憶や頑張りだけに任せられません。職場で使っている申し送りや相談の方法を活用し、必要な情報が次の人につながるようにしたいです。

それでも、仕組みがあれば必ず声を上げられるわけではありません。意見を出した人が責められると感じる空気があれば、言葉は出にくくなります。私は、忙しさを理由に考えることを止めてしまうような空気についても、振り返る必要があると思います。

聞く側にできることもある

言葉にしにくさを考えるとき、私は「どう伝えるか」だけでなく、「どう受け取るか」も大切だと思います。

自分が忙しいときに声をかけられたら、すぐには十分に聞けないこともあります。それでも、相手が気になっている点を確かめたり、今話せないなら改めて聞く時間を伝えたりすることはできるかもしれません。

意見を聞くことは、必ずその意見に賛成することではありません。「どこが気になったのか」「本人について何がわかっているのか」を一緒に確かめることだと思います。

私自身も、看護師として何かを伝える側になるだけではありません。介護職が日々の関わりの中で気づいたことを、私が受け取る側にもなります。そのとき、自分の考えを急いで返す前に、相手の言葉を聞けているだろうかと振り返りたいです。

小さな気づきを、置き去りにしない

気になったことを伝えれば、いつもすぐに答えが出るわけではありません。話し合っても意見が分かれることはあると思います。

それでも、言葉にしなければ、ほかの人には見えないままのことがあります。自分の見方が正しいと証明するためではなく、本人にとって何が大切かを一緒に考えるために、気づきを持ち寄りたいです。

同時に、「言えばいい」と簡単に言うだけでは足りません。話を聞いてもらえるか不安な人も、受け止める余裕をなくしている人もいるかもしれません。働く人の難しさを見ないまま、声を上げることだけを求めたくはありません。

私も、いつも適切な言葉を選べるわけではないと思います。だからこそ、見たことと考えたことを分けて伝える。相手が知っていることも聞く。そして、気になったことをそのままにしない方法を探す。その積み重ねを大切にしたいです。

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