VTIから始まった積立
新NISAで積立を始めたきっかけは、厚切りジェイソンさんの本でした。長期・積立・分散・低コスト。その考え方に沿って、私が最初に選んだのは楽天VTIでした。
VTIには約4,000社が組み入れられています。誰もが知る大企業だけでなく、まだ名前も知らないような小さな会社まで幅広く含まれている。そこに投資することは、アメリカという国全体を、大きな会社も小さな会社も含めて応援しているような感覚がありました。当時の私には、その考え方がしっくりきていました。

オールカントリーの登場で立ち止まった
流れが変わったのは、いわゆる「オルカン」と呼ばれるオールカントリー型の投資信託が話題になった時期でした。
比較の記事や動画があちこちで取り上げられるようになり、その中でよく引き合いに出されていたのがS&P500でした。気づけば、私が積み立てていたVTIの名前を見かける機会は、以前より少なくなっていたように思います。
「みんなが比べているものを、自分でも一度調べてみよう」。そう思ったのが、S&P500について調べ直すきっかけでした。
調べて分かった三つのこと
調べていくうちに、S&P500という指数の背景にある、米国という国そのものの強さに気づかされました。
一つ目は、イノベーション力です。世界を変えるような技術やサービスが、次々と米国発で生まれ続けている現実があります。
二つ目は、人口増加による成長力です。多くの先進国が人口減少に向かう中、米国は移民を受け入れながら人口を増やし続けている数少ない国です。人口は、経済の土台そのものです。
三つ目は、覇権を守るための徹底した姿勢です。中国をはじめ、覇権を握る可能性がある国に対して、輸出入の規制など、米国は自国の優位性を守るための手を打ち続けています。これは强さの誇示というより、覇権国が覇権を維持しようとする、ある種当然の振る舞いなのだと私は感じました。

200年のデータが背中を押してくれた
もう一つ、調べていく中で出会ったのが、ジェレミー・シーゲル教授の研究でした。米国株式市場を200年という長い期間で見たとき、実質リターン(物価の影響を除いたリターン)はどの時代を切り取っても、おおむね年6.5%〜7%に収束してきたというものです。

株式と他の資産を比べた数字も、印象に残りました。
同じ1ドルでも、200年という時間の中でこれほどの差が生まれています。
保有期間による振れ幅の変化も、積立を続ける支えになりました。
| 保有期間 | 実質リターンの最低値 | 実質リターンの最高値 |
|---|---|---|
| 1年 | −38.6% | +66.6% |
| 10年 | −4.1% | +16.9% |
| 30年 | +2.6% | +10.6% |
1年だけを見れば、大きくマイナスになる年もあります。けれど保有期間を長く取るほど、その振れ幅は小さくなっていく。シーゲル教授の研究では、10年保有でも稀にマイナスになることがある一方、20年という期間まで延ばすと、過去に一度もマイナスになった例がないという結果が出ています(別の直近データでは、20年でもごくまれにマイナスの期間があったとする分析もあり、必ずプラスになると決まっているわけではないと、私自身は受け止めています)。
積立先を切り替えた日

こうして調べたことを重ねた結果、私は2025年1月をもって楽天VTIへの積立を中止し、2月からeMAXIS Slim S&P500へ積立先を切り替えました。
コストの面でも、S&P500は楽天VTIよりも信託報酬が低い水準にあります。値動きはほぼ同じように感じていたので、コストが低い方を選ぶという判断は、自分にとって自然な流れでした。
小さな会社まで応援したいという、VTIを選んだときの気持ちがなくなったわけではありません。それでも、巨大テック企業やハイパースケーラーと呼ばれる企業群が、これからも資本主義の力でさらに大きくなっていくことは、容易に想像できる未来だと感じています。米国という国の覇権が、当面の間揺らぐことはない。そう考えたとき、より集中して投資する選択に、迷いはありませんでした。
振り返ってみると、厚切りジェイソンさんの本をきっかけに始めた積立の根っこにあったのは、私にとっても「米国という国への信頼」だったのだと思います。当時は言われるままに始めただけでしたが、自分で調べて、自分の言葉で納得できたことが、今回の切り替えにつながりました。
ただ、誰かから投資について相談されたときには、私はいつもeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)を勧めています。世界中の国や企業に自動的に分散してくれる仕組みは、今後どの国が成長しても、どの国が停滞しても、その変化に自分でついていく必要がない、非常に完成度の高いシステムだと感じているからです。
米国に集中する今の私の選択は、あくまで自分自身がこれまで調べ、感じてきたことに基づく、いわば「上乗せしたリスク」です。誰にでも同じようにお勧めできるものではないと、自分では思っています。
これからも積立を続けながら
投資に絶対はありません。米国の覇権がこの先も続くという考えも、私個人の見方に過ぎず、状況が変われば見直すこともあると思います。
それでも今は、S&P500への積立を、これからも淡々と続けていきたいと思っています。



コメント